トークセッション記録
「ファッション×デザイン×アクション 若きイノベーターが拓く脱炭素アパレル」
MC:エバンズ亜莉沙 様
講演者(川崎様、齊藤様)、万博プロジェクトチームメンバーとの対談
エバンズ:それでは次に、トークセッションに参りたいと思います。
本イベントのタイトルであります、「ファッション×デザイン×アクション 若きイノベーターが拓く脱炭素アパレル」をテーマに、先ほどご講演いただきました、川崎様、齊藤様、また「万博×環境 未来を描こうプロジェクト」チームのメンバーとのダイアローグを通じて、地球環境課題解決に向けた意識改革と行動変容に向けたアイデアをお伺いできればと存じます。引き続き、トークセッションの進行を務めさせていただきます、エバンズ亜莉沙です。よろしくお願いいたします。
トークセッションに関するご意見やご質問などございましたら、チャット欄にご記入ください。いただきましたご意見やご質問は、こちらのトークセッションに取り上げさせていただきます。
大学生の発表を見て、率直にいかがですか。
齊藤:どちらも面白いと思ったのですが、古市さんの発表を見て、エンタメを通して学ぶというのは最初の入り口として必要で、多くの人に知ってもらうきっかけになるのでアプローチとしていいなと思いました。リアリティーがあればあるほどより実感できていいのかなと想像しました。未来で起こす行動も大切だけど、例えばセッティングを今に置き換えて、今の行動がどう今後の未来に影響するのかというのも見てみたいなと思いました。
エバンズ:その先の未来が見えれば、よりモチベーションにもなりますね。防災班についても何かありますか。
齊藤:私自身何も準備できていないので、率直に欲しいなと思いました。ファッションを通して、まず欲しいなと思うこと、取り入れたいと思わせるデザインが非常に魅力的だなと思いました。元々PLACTICITYも雨から自分たちを守ってくれているものを作りたかったのですが難しかったので、すごいなと思いました。
エバンズ:川崎さんはいかがですか。
川崎:お二人に質問しながら私もコメントしていければと思います。古市さんの発表で思ったのは、コロナ禍で考えられた結果のアイデアなのかなと思いました。コロナでお家にいたので私たちの間で話題に上ったのは、「集まれ、どうぶつの森」だったように思うのですが、現実でのコミュニケーションをゲーム空間で実際にやってみると、どこが良くて、どこが違うのかが盛んに議論されていたと思います。古市さんの世代の方々はSNSやゲームなどに親近感を持っているのかなと思いながら楽しく聞きました。一つ質問なのですが、どういった流れでゲームを用いようと思ったのですか。
古市:私たちの班がゲームに着目した理由は、世界各地から来られる方々に、世代、国籍問わずに利用してもらい、それを通じてSDGsについて学んでもらいたいと思ったときにゲームだとやりやすいと感じたので選びました。
川崎:ゲームは色々な人が携われるのでゲームはいいですよね。VRはハードル高いと思うかもしれませんが、自分で作ることのできるソフトも出ているので、それを使ってチーム内でプロトタイプするともしかすると企業スポンサーがつくかもしれませんね。
少し防災についてもコメントしていいですか。最優秀賞を取られた作品が素敵でかっこいい上に、防災の機能面も考慮されているウェアだし、僕も欲しいなと思いました。
僕が渡部さんにお伺いしたいのは名前にLABOとついている理由をお伺いしたいです。
渡部:ラボの名前の由来は、ファッション×防災という未知の領域の実験場として機能したいという考えからです。2025年の万博に向けて活動を行なっているので、万博自体のテーマと同じく、未来社会の実験場として活躍したいと考え、コンペを実施しました。
川崎:渡部さんは話し方から社長に向いているなと思いました。おっしゃる通り、万博は未来を考える場所だったのでLABOという形はフィットしていると思います。せっかくのアイデアを事業化してやっていくことを期待しています。このような活動はすごく求められていますし、衣食住の枠組みも素晴らしいので頑張って欲しいなと思っています。アーバンリサーチさんとはどうやってコミュニケーションを取られたのですか。
渡部:それは主に大阪府さんのありがたいご支援のおかげです。
川崎:プレゼンは渡部さんがされたのですか。
渡部:そうですね、アーバンリサーチさんにイベントにご参加いただいて僕以外のメンバーがプレゼンして、ありがたいことに興味を持っていただいたという形です。
川崎:なるほど。引き続き頑張ってください。
エバンズ:もしかすると一緒に何かすることになるかもしれませんね。私が思ったのは衣食住でファッションと防災を掛け合わせて、マッシュルーム、キノコで作られた服を、いざとなったら食べられるようなことも考えられるのでしょうか。
川崎:やはり防災は現実的な課題であるので、今回考えられていたOMAMORIのような機能的なプロダクトというのは実験場の中でどんどん生み出されるべきだと思います。他方で社会や技術、環境が変わった時のことを考えて防災していく必要もあるので、現実編と未来編のような形でLABOをやるのはどうでしょうか。そういったアイデアを企業さんは求めているので、本当にいいビジネスチャンスを見つけられましたよね。
エバンズ:社会課題について取り組むというのはビジネスにならなければ大きなインパクトを作ることができなかったり、持続可能性に繋がらなかったりするので、これを広めていって欲しいなと思いました。お二方から逆に質問はありますか。
渡部:齊藤さんにご質問です。意地悪な質問にはなるのですが、お話を伺う中で、傘をアップサイクルで製品化したことはものすごく環境的に良いことをされているなと思いました。しかし一方で、新たな製品を作る際にも製造上で環境負荷がかかりますよね。輸送の際やプレスの際にかかるお客様に届くまでのトータルの環境負荷についてはどうお考えでしょうか。
齊藤:確かに、輸送での環境負荷は存在します。しかし生産面で気をつけているところは接着剤などを混ぜずに環境負荷のない形でできることを考えています。実際にその素材自体はプラスチックが溶けるという性質を使って作られているのですが、プレス機などは常に稼働はしないようにしたり、そもそも傘の分解は手作業であったりとそれぞれで負荷を最小限に抑えています。
渡部:ありがとうございます。本当に流石だなと思いました。僕もお金が貯まったら是非、購入したいと思います。
エバンズ:かなりこだわりが強くて、タグも傘の同じ素材の余った部分を使うとか、ペットボトルのリサイクルナイロンのものを使うとか、デザインがシンプルなのも元々分解が難しくてリサイクルが難しいものを、また色々な素材と混ぜると意味がないのでそういったところで環境負荷はできる限り意識されているかなと思うのですが、ご指摘いただいた部分は難しい問題で、計ることが困難だと思っていて、例えばVRのSDGs GAMEも機械を作るのにそれだけの材料が使われているのか、そのコストやエネルギーというのはそこからゲームを体験してくれた方達がマイナスにできるようなものなのかどうか、測り始めるとかなり難しいと思いますね。
川崎:今、カーボンフットプリントの計算の指標や計算の仕組みができています。おっしゃる通り僕らもデジタルで効率よくやっているけど、しっかり評価して企業や使う人に提示していかなくてはならないと思うので本当にいい指摘でした。傘の事業も情報をセットで提示するとより良いプロダクトになるのではないかと思いました。
エバンズ:古市さんの方からもコメントやご質問などなりますか。
古市:お二方とも、お話をありがとうございます。齊藤さんのサビのある商品が届いたお客様の話のときに、私もその節があると感じました。新しいものが欲しいと考えていたのですが、今メルカリなども流行っていて、中古のものにも価値がつくようになっているので、フリマアプリなどがより広まると、サビがあってもそれを美しさだと捉えることができるようになる人が増えると思います。川崎さんの方では、カタカナが多くてすごいなといった印象でした。一つ私が感じたのは、バーチャルクリプトファッションのお話をされていて、ファッションの脱物質化、デジタルの中でのファッションが想像できていないので興味を持ちました。実際にどのような場面で用いられるのですか。
エバンズ:私もその部分は気になっていました。
川崎:古市さんがおっしゃったように、ゲームをするときに、自分のアバターに洋服をどう選ぶとか、どう着させるのかという点をサービス上で設計するのがバーチャルファッションです。簡単にいうとNIKE IDのように選択していくと自分の好きなようにカスタマイズできるものです。現実空間と比較してバーチャルファッションは環境コストが低いという結果も出ているのでそのような研究も注目が集まっています。SDGs GAMEとも似ていると思います。メルカリなどの二次流通も脱物質化なので、バーチャルファッションをすでに古市さんが理解しているような質問だったのですごく面白いと思っていました。
古市:ありがとうございます。脱物質化の定義を、私は「生み出さない」と考えていたのですが、リサイクルなども含まれているのだと思ったので詳しく調べてみようと思います。
エバンズ:持続可能な世の中を作る中で、必要な視点はサーキュラーの視点です。どれだけものを循環させるかというのがこれからすごくキーになってくると思うのですが、その中でもテクノロジーは欠かせないということですかね。
川崎:お二人の提案は新しい何かを作るだけではないと思います。ゲームや仕組みなどプラットフォームを提案していく中で、様々なテクノロジーが使われたり、手仕事のようなものが再評価されたりということが合体していくと、少しずつですがカーボンニュートラルが達成していくと思います。
エバンズ:たくさんご質問いただいているのでピックアップして話したいと思います。持続性を真剣に考えないとファッション自体も人類共通の課題であるという川崎さんのお話にもあったように、全てのジャンルにおいて手を取り合って協力し合うことで初めて実現できることだという風に思いました。工学系の学生とファッション分野の学生が一緒に勉強したり起業したりすると面白いと思いますが、大学や学校で取り組みはありますか。
川崎:あまり多くはないのですが国内でもいくつかある印象です。例えば関西だと京都工芸繊維大学はデザインラボが学内にあり、繊維系の先生や建築系の先生が集まっています。さらに、母校で恐縮なのですが、慶應大学のSFCでは製作を勉強したり、環境やプログラミングなど様々な勉強をしたりしている学生がごった煮になっています。そのような環境で勉強するといいのではないかと思います。自分からアクションする部分と、大学などのアカデミックの部分の両方が必要ですね。
エバンズ:海外に行かなくても、国内の大学で勉強できるということですか。
川崎:そうですね。海外も素晴らしいですが、日本でも面白い学校はたくさんあります。
エバンズ:海外と日本での意識の差を感じることがたまにありますが、明希さんはどうですか。
齊藤:一番感じるのはゆるさや、オープンさ、柔軟さの違いです。日本は良くも悪くも便利で、海外に行くことで不便さを初めて感じました。日本に帰ってきた時に、こんなにすべての問題に対してのソリューションは必要ないなと個人的には思うこともあったりします。
エバンズ:少し離れたり別視点から見たりすることで気づく部分ですね。
他にも質問が寄せられています。柔軟さが大切だというお話がありましたが、取り組みを進める中でネックと感じていることや、より進めていくために必要なことは何ですか。
齊藤:まずデザインとしていいと思ってもらいたいですが、端材は出したくないというバランスが難しいといつも思います。あとは、メインの素材がアップサイクルなものなので、できれば金具や他のパーツもデザイン性を失わずにアップサイクルな素材を用いたいと考えています。できる限りは使っているのですが、完璧にはできていないのでそこはネックに感じる点です。
エバンズ:一番最初から完璧なものを作ろうとすると前に進めない可能性もありますし、トライアンドエラーの精神も大切なのかなと思いますね。
もし、講師のお二人がコラボするのであればどのようなことができると思いますか。
川崎:まず齊藤さんの講演の感想を述べたいと思います。ちょうどコメントでサビつきのバックが個性的で衝撃的でしたと言われていますよ。私も実はサビつきの話がとても良かったと感じていて、リサイクル界隈ではカスケードと呼ばれて従来だと価値が落ちるのですが、逆にそれが新しい価値、新しい当たり前になってくると思います。僕らがいびつだとか汚いだとか思っているものも美しさに転換するような価値観の転換を起こそうとされているので、面白いなと思いました。
エバンズ:もの以外も、みんな違ってみんないいというように多様性が認められ世の中になっていて、すごく環境にとってもいいことが起こりやすい世の中になってきつつあると思うのですがいかがですか。
川崎:いろいろな人がカーボンニュートラルやサステナブルファッションに関わってほしいですね。齊藤さんの金具の問題も理系の方など別のジャンルの方と多様なアイデアを出すことで、解決策が生まれることもあると思います。多様さはそういった意味でも重要です。
エバンズ:今、リサイクル素材で作られたものはものすごい勢いで増えていると感じています。ただリサイクルされた素材というだけで終わらずにどう循環していくかという部分もテクノロジーを掛け合わせていくことでより現実的になっていくと思います。さらに質問が来ています。ファッションは昔からあるビジネスですが、そのようなジャンルの経営者や百貨店などの小売の担当者の理解は進んでいますか。
川崎:齊藤さんは東京で活動されていますがどういった方とお仕事されていますか。
齊藤:ファッションというよりは職人さんのように作り手の方と関わることが多いです。
川崎:質問にあったように、小売の方とサステナブルな取り組みの相性はどう感じていますか。
齊藤:百貨店で企画などもされているということは知っていますが、ビジネスとして今までのやり方からシフトするという方法は難しいのかと思います。特にカスタマーサービス的な観点からも、日本は包装する文化であったりするので、今後はカスタマーを喜ばせながらもサステナブルに考えていく必要があります。例えば私と亜莉沙ちゃんはギフトを贈る際にそのまま渡したりします。お店ではそれはできないけど、どこまでならお客様も納得していただけるのか、ハッピーになってくれるのかというのは考えていく必要があると感じます。
エバンズ:関係性を築いていく中でお互い歩み寄っていくということがすごく重要なのかなと思います。例えば、百貨店さんとブランド側で意見が違う部分があったとしても探り続けるとお客様の幸せというものが共通のニーズとしてあるかもしれないですし、じゃあそのために私たちが協力してできることはこれだよねと探ることもとても大事だと思います。私は普段、ポップアップのディレクションを百貨店さんの方でさせていただくことも多いのですが、関係者の環境への理解は「人による」というのが正直なところです。SDGsに取り組んでいかなくてはならないということは企業間での共通認識としてあるが、個人レベルまで落とし込んで自分ごととして捉えているかどうかはまた違ってくると思います。どれだけ身近に感じているのかは大きな課題と思っています。
また質問が来ておりますが、こういった製品や取り組みに共感してくれる人は若い人が多いですかということですが、川崎さんいかがでしょうか。
川崎:あまり世代の問題にしたくはないです。若い世代は意識的だと言われますし、その事実は確かにあるのですが、やはり強調しておきたいのは、環境問題はどちらかというと地球や惑星の問題で、人間だけでなく動植物を含む生態系全体の問題なので年齢の問題は小さいかなと思いますね。
エバンズ:ジャンルにもよりますが、やはり若い人の方が危機感や環境に良いものを選びたいという人は多いのかなと感じています。古着かっこいいじゃんという部分もそうですが、そういったことを柔軟に取り入れられるのも若い世代の方が多いのかなと感じています。
川崎:セーターを東京のニット工場で作っているのですが、工場に行くと80代のおじいちゃんがニットマシンに頭を突っ込んで針を調整していました。コンピューターでニットのデータを機械に送信するのですが、ボールマウスを使っていて、テクノロジーに関するジェネレーションギャプも確かにあります。でも、私たちが通ったりして、コミュニケーションを取り続けると、AIもいいものだなと思ってもらえるようになりました。カーボンニュートラルやサスティナビリティもそれと同じで、コミュニケーションが足りていないだけの話だと思うので、それを世代の問題にしてしまうと不幸な結果が待っていると思います。
エバンズ:今日のように世代を超えた人々が共通のテーマで語り合える場というのはすごく貴重ですし大切ですよね。残り時間が少なくなっていますが、
今日私が講演の中で素敵だなと思ったのは、川崎さんのプレゼンの中にあったスペキュラティヴという言葉です。立ち止まって未来について深く考えていく時間をもっと作っていくべきだなと感じました。今の選択が未来に直接繋がっているというのはリアルな実感につながるという意見があって、今をどう生きるかを選ぶために、未来について深く考える必要があるのかなと思うのですが、未来について深く考えすぎてしまうと身動きが取りづらくなるなと思っているのですが、古市さん、渡辺さんはその辺りについてどう思われますか。
渡部:研究機関だと2060年を見据えてどうあるべきかを検討していますが、一般の方にどのように普及していくのかという部分は大きな課題だと思います。
エバンズ:古市さんはいかがですか。
古市:過去・今・未来がつながっているので、見極めて未来がどうなっていくのかを考えてしまいますね。
エバンズ:まさに過去が今になり、今が未来になるというのが本当に当たり前な話だと思うのですが、その中で大きな枠でなく個々人が検討できるようなきっかけが普段生活している中ではなかったりするかと思います。もう間も無くお時間になりますので最後にお二人からご意見いただければと思うのですが、脱炭素社会の実現に向けて行なっていきたいことなどあれば最後にメッセージをいただきたいと思います。
齊藤:未来について考えることは大切ですし、それを考えることで今できることが見えてくると思います。それと同時に私がよく思っていることは、もし仮に明日気候変動が起こっていなかったとしても、私は傘をアップサイクルし続けたいと思いますし、今の状況が変わっても日々どう生きていきたいのかを考えていくきっかけに今日のトークがなればいいなと思っています。
川崎:コメントにもあるように、「未来をつくる」というのはいい言葉だと思いました。作ることでしか未来を実現できないのかなと改めて認識した次第です。一番しなくてはならないのは考えるだけでなく、出来るだけ多くの人に関わってもらうことだと思います。ハイテクや精密な手作業だけでなく、知ることも作ることに参加することだと思いますし、ニュースを見て知ることも作ることに参加することの一部だと思います。難しい概念が多くなってしまっているのはなんとかしなくてはと思うのですが、是非みなさん機会もあるので作ることに参加することを心がけてもらいたいなと思います。とにかく大学生が素晴らしすぎるので、未来は明るいと思いました。今日はありがとうございました。
エバンズ:作るということは物理的なところだけではなくて、お二人が参加されているプロジェクトのように、普段から私が心がけているのは自分自身が描きたい理想とする未来に自分自身がまずなること、自分自身が実際に行動していくことなので、お二人の発表を通じて、改めて作ることを続けていきたいと感じました。オンラインでご視聴していただいている皆様も何かヒントやアイデアを受け取っていただければ幸いです。では最後にゲストのお二人、大学生のお二人もありがとうございました。
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